診断を確定するための検査

遺伝学的検査

たとえ最初に筋生検でDMDと確認されていても、遺伝子検査は必ず必要になります。各種の遺伝学的検査で、遺伝子変異の詳しい情報が得られます。遺伝学的検査で診断を確定することが重要な理由はいくつかあります。例えば、特定の遺伝子の変異をもつ患者さんを対象にした治験に、お子さんが対象になるかどうかを判断することにも役立ちますし、ご家族が、以後の妊娠や出生前診断についてを考える上でも役立つでしょう。

 

お子さんの遺伝学的検査で、ジストロフィン遺伝子の変異が見つかったときは、お母さんも遺伝学的検査を受けて保因者かどうかを確認することをお勧めします。お母さんが保因者であるかどうかの情報は、母方の家系の他の女性(お母さんの姉妹、娘、叔母、いとこ)も、ご自身が保因者であるかどうかを知るうえでとても大切なことです。

 

遺伝子検査と遺伝カウンセリングは、ご家族が、遺伝学的検査結果を理解したり、他のご家族に及ぶかもしれない影響を理解する上で役立つでしょう。

筋生検

確定診断のため、主治医から、筋生検(筋肉を少量採取して検査すること)を勧められることがあります。ジストロフィン遺伝子の変異によって、DMDでは、ジストロフィンというたんぱく質が、全くまたは十分に作ることができません。筋生検によって、筋線維の中にあるジストロフィンの量を知ることができます。

 

遺伝学的検査で診断がすでに確定していれば、筋生検は必要ないこともあるのですが、筋生検によってDMDの診断を行っている病院もあります。筋生検でDMDと診断された後で行われる遺伝子診断は、DMDを引き起こすDNAの特異的な変化や遺伝子の変異を判定するために不可欠です。

 

一般的に、筋生検では2つの検査が行われます。1つは、ジストロフィンの免疫組織学的検査、もう1つはタンパク質の量を調べる検査です。これらの検査によって、筋肉のジストロフィンの有無がわかり、DMDと、DMDより軽症なベッカー型を判定することができます。

筋生検; 左:筋線維の周囲にジストロフィンの有る正常な筋肉、右:ジストロフィンが欠損したデュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋肉

その他の検査

神経筋疾患が疑われるお子さんには、筋電図(EMG)や神経電動速度検査などが、以前から伝統的に行われてきました。現在こうした検査は、DMDの評価には適切ではないまたは不要であると、専門家の間では考えられています。